「・・・カクさんっ!?」


悲鳴にも聞こえる高い声。
その声の主は1番ドック唯一の女性、のものだった。

 


紅い眼

 


「・・・?」


大声で自分の名前を呼ばれ思わず振り向くカク。
血相を変えて走ってくるを見て薄汚く笑う海賊。

この町ではそう珍しくない“掃除”終了。のハズだったのだが。
掃除が終わり、持ち場に戻ろうとした大工達にめがけて
放たれた1発の弾丸。
銃口の先には職長カクが居て。
それをギリギリで避けたつもりだったのだが右腕に掠ったのだった。

その時。
先程まで買出しに行っていたが帰ってきたのだ。
右腕を抑えているカクを見て驚いた
思わず声を上げてしまうのだった。

カクに駆け寄る
カクの傍に居たルッチがの為に場所を空ける。
傍に来たは心配そうに見つめる。


「大丈夫ですかっ!?」

「ああ・・・心配いらん。掠っただけじゃ。」


の必死な声に冷静に答えたカク。
まだ心配そうなの表情。


「心配いらんから・・・離れておけ・・・」

「!!・・・カクさん・・・血が!」

「『!!』」


誰に対してか少しイラついた口調で言う。
その時が右腕を押さえていた左手の甲から流れる血に気が付いた。
が“血に気が付いた”時に同時にしまったというような表情をするカクとルッチ。
他の者には何故かはわからない。


ドクン・・・


何かが大きく脈打つような音がした。
そして次の瞬間。


「・・・・・・!!・・・痛ッ・・・」

「!・・・っ!」

「・・・あぁ?」


頭痛を訴えるように頭を抑える
焦って声を上げるカク。
だがルッチは冷静な顔をしていた。
海賊には何が起こっているのかわからず
只不機嫌を表情に表しているだけだった。


ドクン・・・


「ぁ・・・・・・っ!・・・ぅあ・・・・・・っ」


フラフラとよろめきながら痛みを声に出す。
心配そうなカクとは裏腹に冷静で、
そして少し楽しんでいるようなルッチ。


・・・」

『カク!』


何度もを呼ぶカクをルッチが止める。


『カク・・・静かにしろ・・・』

「何で・・・じゃっ!」


ルッチに抑えられながらも必死に抵抗するカク。
まだ痛むのかはずっとうなされていて。
訳のわからない海賊は更に不機嫌になったようで。


「何なんだよテメェ・・・殺されてェのか?あぁ?」

「・・・!貴様等っ・・・!!」

『待てっカク!』


イラついたように言う海賊に対し
その言葉に腹を立てたカクが突っかかりそうになる。
それを急いで止めるルッチ。


「何で止めるんじゃ・・・ルッチ!」

『待て・・・カク。落ち着け・・・を見てろ・・・』

「・・・!?」


さっきから自分を止めるルッチに怒って尋ねるカク。
よく意味のわからない返事をするルッチに疑問を覚えた。


「・・・・・・・・・」

「・・・・・・?」


先程までうなされていたが急に静かになった。


「・・・早く・・・」

「あん?」


がやっと言った言葉。“早く”。
いい加減怒りも頂点に達しかけている時に言われた
何とも意味不明な言葉。
苛立ちを剥き出しにして聞き返す海賊。


「・・・早く・・・逃げて下さい・・・」

「あ゛ぁ!?」


の言葉に嘲るような反応をする海賊。


「・・・早く・・・逃げて下さい・・・お願いします・・・」

「はぁ?何だコイツ!馬鹿じゃねぇのか!?意味わかんねェや!!」


繰り返し同じ言葉を言うに罵声を浴びせる海賊。


「・・・早く・・・」

「何で俺らがアンタなんかから逃げないといけねェんだぁ?」


笑いながら言う海賊。
全くもって余裕というかのように。
だがそんな“余裕”な笑みもここまでで。
次のの一言で海賊の表情は一転。
“焦り”に変わるのだった。


「貴方達を・・・殺したくはありません・・・」


海賊の表情を一転させる言葉。
普通なら海賊らしく汚く笑って
何言ってんだコイツなどと言いながら襲いにかかるのだろうが、
今回は違った。
さっきまでの余裕は無く、焦りだす海賊。
の雰囲気が一気に変わったからだった。


「・・・?」


さっきから心配していたカクだったが
この言葉は“心配”している言葉ではなく。
“確認”の言葉だった。


「貴方達を殺したくはありません・・・早々に去って下さい。」

「そっ・・・そういう訳にゃあいかねぇなぁ!!」


もう一度が言った。
さっきは願うように。そして今度は警告するように。
まだ一度も顔を上げない
“焦り”ながらも抵抗の声を上げる海賊。
その光景を眺めているルッチは笑っているように見えた。


「・・・・・・仕方ありませんね。」

「「『!!!』」」


が顔を上げた。
その瞬間多くの者が声を失った。

顔を上げたの両目が紅く輝いていたのだ。


「手荒な行動は好みませんが・・・」

「う・・・うるせぇ!!」


淡々と喋るに対し恐怖を隠しきれない海賊。
だが今更後に引く訳には行かず
震える体を無理矢理動かしてにとびかかった。


ズバッ・・・


肉が裂ける音が響く。
男の見え見えの動きにスッと身をかわすと
眼に映らないほどの速さでナイフを持った両腕を動かし
そして後ろから男の背中を一突き。
一瞬にして崩れ去る海賊。

あまりにも速過ぎる出来事に思考が追いつかず、
混乱する者ばかりで。
カクは驚いてを見つめ
ルッチは何故か笑っていたのだった。
残っていた海賊達は悲鳴を上げながら
先程大工達に痛めつけられた体を引きずって逃げていった。

辺りは静寂に包まれる。
残っている者の視線はから離れる事無く。

はナイフをしまうと体の向きを変え、
カクの方に歩いて行った。
そしてカクの前で止まる。


「・・・大丈夫ですか?・・・カクさん。」


少し悲しそうに尋ねる
だが眼の色は元に戻っていて。
少し赤みが混じってはいたが元通りの白と黒の眼だった。


「あ・・・ああ。」

『・・・・・・・・・』


声を掛けられ一応返事をするカク。
ルッチは何も言わず黙って立っている。


「・・・・・・良かった。」

「・・・・・・・・・」

『・・・・・・・・・』


の言葉から先が続かない。
嫌な空気が流れる。
はというと良かったと言えど顔は笑ってはいなかった。
悲しそうな表情のままで。


「・・・・・・見られたく・・・なかったです・・・」


泣きそうな笑顔で言う。


『“龍の血”・・・か』

「・・・・・・“私の血”・・・です。」


やっと口を開いたルッチ。
それにが答える。
自分の言葉を訂正された事にルッチが少し顔を歪める。ほんの少し。


「確かに・・・“龍の血”でもありますが・・・
 “私の血”が“紅”だから・・・」


悲しそうに言う
まだよくわかっていない2人。


「私達“龍族”はそれぞれ個々に色を持っています。
 私は“紅”なのです。」


説明を始める
2人は聞き入っていた。


「個々の色によって性格や能力が変わってきます。
 ・・・そして“紅”は最も能力が高く・・・凶暴な色なのです。」


言い難そうにが話し続ける。


「“紅”は血にとても敏感で・・・
 私はある程度制御する力を身につけているので
 被害は最小限に抑えれましたが・・・
 でも・・・それでも1人の命を奪ってしまいました・・・」


心からの後悔を顔に出す
その話に疑問を感じたルッチが質問をした。


『・・・じゃあもし・・・制御する力が無かったら・・・どうなる?』

「・・・・・・眼に映った人全員を殺しています・・・」

『・・・!』


暗い表情でが答えた。
ルッチはその答えに驚いたがまた冷静な顔に戻る。


「ですが・・・“紅”は凶暴でこそありますが・・・
 “守護”する事で他に劣る事はありません。」


が冷静に話し続ける。


「普段主人以外を守護する事は無いのですが・・・
 大切な人の血が流れる事により・・・血が騒ぐ事もあるのです。」


悲しそうな表情。


「そしてこの血のせいで私は・・・」

「もういいじゃろう。」


ずっと黙っていたカクが話を絶った。
驚いてカクを見る
ルッチもカクを見る。


「もう・・・いいじゃろう。ルッチ。」

『・・・そうだな。ポッポー』

「・・・・・・」


カクが帽子を目深に被る。
ルッチは少しイラついた表情をしたがすぐに相槌を打った。
は黙っている。


・・・もう・・・いい。
 ・・・これ以上自分を責めなくても・・・」

「!・・・カクさん・・・」


悲しそうに笑いかけるカク。
は眼に涙を浮かべていた。


「もう“掃除”は終わったんじゃ。仕事に戻るぞ。」

『ああ・・・』

「はい・・・」


手を叩いて仕切り直す。
ルッチは一足早く持ち場に戻って行った。


・・・今無理して話さんでもいいんじゃ。
 只、誰かに聞いて欲しくなった時に言ってくれ。
 その時は・・・ちゃんと聞いてやるからのう。」

「・・・・・・っ!・・・カクさ・・・っ!!」


優しく笑いかけるカク。
その途端にさっきまで堪えていた涙を耐え切れずに流してしまう。

突然思い切り泣き出した
泣いている所を初めて見た。というのもあるが
思わず焦ってしまう。
だけどさっきまでの“焦り”とは違う、
安心しきった“焦り”だった。

 

 

――――――――――あとがき***―――――


・・・・・・どうしよう・・・。 (ぇ
どうしようどうしよう私の書くカクがとてつもなくキモイ・・・! (今更
何か主人公凄い事になってきちゃいました・・・!
ていうか普通に人殺しちゃいましたけど!!ちょっとーー!! (何
せんせー!“血のせい”で人殺すのは有りですかー? (無しです
正直言ってどうしたら終われるかで悩んでました。 (酷
カクのおかげで終われましたが・・・カクが居なかったら・・・ (・・・
文才と画力とやる気が欲しいです! (えぇ

2006.4.23

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