「職人のナワバリで海賊の道理がまかりとおる訳ないでしょう?」


1番ドックで職長達の帰りを待っていた
静かに留守番をしていたハズなのに、
いつの間にやら“掃除”をしていた。

 


 


「何だとこのアマ!!」

「殺されてぇのかぁ!?」

「素直に払ってくださればお怪我もせずに済むのに・・・」

「あ゛あ゛ぁ!!?」


彼女の言葉に益々腹を立てる海賊達。
ついには刃物を持ち出した。


「死ねぇ!!」


大声で向かってくる一人の男。
それをヒラリとかわすと首元をトンッと軽く叩く。
すると男は前に倒れかけながらヘナヘナと座り込んだ。


「あ!?何座ってんだテメェ!」

「何かわからねぇけど力が入らねぇ・・・」

「はぁ!?」

「首にあるツボを押しました。
 暫くは立ち上がることもできませんよ。」

「なっ・・・!?」


男は座り込んだ男に怒鳴り出す。
情けなく答えた男に更に別の男が怒鳴る。
冷静に答える
誰も よりも1回りも2回りも大きい男。
それにも関わらず全く焦りを感じさせない動き、言動。
それがカンに触るのか男は顔を真っ赤にして叫んだ。


「ふざけたマネしやがって!!」

「ふざけているのはそっちでしょう?
 修理するだけしてもらっておいて“代金を払わない”なんて。」

「うるせェ!!」


遂には男は懐から拳銃を出した。
それでも尚冷静な顔の


「・・・卑怯な」

「はっ!海賊は何でもアリなんだよ!!」

「今の内に土下座をして謝るっつんなら考えてやっても良いぜ?」

「死にたくなかったら土下座しやがれ!!」


が恐怖でその言葉を言っているととらえたのか
海賊達は調子に乗り出した。
その言葉に が顔を歪めたのを見て海賊達は優越に浸る。
“勝った”と大笑いしながら。


「何なら体で払うかーー?」


ヒャハハッと笑う海賊達。
はぁっとため息をつく
その動作に海賊達は笑うのを止めた。
辺りはシーンと静まり返る。


「いちいち煩いですね。」

「あ゛!?折角優しい俺達が体で許してやろうっつってんのに・・・」

「撃てば良いじゃないですか。」

「!!」


まだ少し笑いながら話す海賊の話を絶つように話す
“撃てば良い”
考えもしなかった答えに海賊達は一瞬驚いた。
だがすぐに笑みを取り戻し、
少しイラついた口調で銃を構える。


「わかったよ。そんなに死にてェなら殺してやる。」

「・・・・・・・・・」

「今更後悔したって遅ェぞ嬢ちゃん。」

「さっさと撃って下さい。
 それとも卑怯な海賊は引き金を引く勇気も無いのですか?」

「っ・・・!!死ね!!!」


殺すと言いつつも引き金を引かない海賊に対し
命の危機にあるという は“時間の無駄”とでも言うように面倒臭そうに話す。
先程から怒りが溜まっている海賊はとうとうピークに達したらしく、
迷う事無く引き金を引いた。


バァン・・・


辺りに響き渡る銃声。
だが悲鳴や呻き声などは聞こえず
はそこで冷静な顔をして立っていた。


「な・・・に・・・!?」

「・・・私だって一応職人ですし・・・
 薄汚い海賊の手で死ぬわけにもいきませんからね。」


全く顔色1つ変えずに立っている
その姿を見た海賊は一瞬恐怖を覚えた。


「・・・・・・まぁ・・・あなた方程度ならここまででしょう。」

「・・・くっ・・・そがぁっっ!!」


尚も話し続ける に焦り、引き金を引く。


バァン・・・

バァン・・・


何度も響く銃声。


「・・・そろそろ・・・観念したらどうです?」

「・・・ひっ・・・」


何度撃っても一度も当たらない。おかしい。
確かに撃っているはずなのに。何故だ?
急いで頭を回転させている海賊に対し、
若干イラついた表情で が睨む。
その眼に怯え思わず恐怖の声をあげてしまう。
すると別の男が前に出てくる。


「ドイツもコイツも情けねぇな!
 こんな女俺が殺してやるよ。」

「・・・・・・はぁ・・・」


他の奴よりも更に1回り大きい男が言う。
周りの奴の表情を見る限り、リーダーといったところだろう。
は呆れてまたため息をつく。


「まだやるんですか・・・」

「あばよ姉ちゃん。」


呆れたという仕草をしながら話している を無視し、
その男は後ろにまわった。
その速さは普通の人の眼には追いつけないほどの速さで。
手に持っていたナイフを振り下ろそうとした。


ガキィン・・・


刃物と刃物がぶつかりあう鈍い音が響く。
右手にはナイフを持っていて男のナイフとぶつかっていた。
は振り向きもせずにもう1つのナイフを素早く出し利き手ではない左手で振り上げた。


スパッ


「!!・・・くっ!」

「・・・・・・・・・」


途端に男の服が裂けて散る。
男は負けを認めナイフを手放す。
カランと音を立てナイフが転がっていく。
それを確認した は両手に持っていたナイフを腰に戻す。


「・・・どうして切らなかった・・・?
 お前なら切れたはずだ。変な同情なら迷惑だ・・・」


男は右手を上げたまま言った。


「・・・別に貴方に同情した訳じゃありません。
 只この1番ドックが薄汚い血で汚れるのが嫌なだけです。」


相手が負けを認めると の雰囲気は一転し振り向いて笑顔で話した。
男は上げていた手を下げると驚いた表情で を見つめた。
俺はコイツに負けたのか・・・?というような顔で。
は笑顔で見つめ返す。


「・・・えっと・・・では代金は払って頂けますね?」

「・・・・・・ああ・・・」

「・・・!!リーダー・・・」


笑顔でそう言った に仕方無いといった表情で頷く。
他の男達は驚いて名前を読んだが
我がリーダーと目の前の彼女の戦いを間近で見ていたため反論ができなかった。


「・・・・・・悪ィな・・・“ふざけたマネ”しちまってよ・・・」

「!!・・・いいえ。こちらこそお客様に無礼な事を・・・」


戦いが終わると何故かのんびりと会話しだす男と女。
しかも話の内容は謝り合い。
彼女だけならず海賊のリーダーまでもが謝る始末。
何だかやるせない気持ちになった海賊達。


「・・・さあっ野郎共・・・帰るか・・・俺達の船に!」

「「「おうっ!」」」


一通り話を済ますと出発をする海賊達。
ついっさきまで戦っていた相手だというのに笑顔で送る


「行ってらっしゃいませ、良い旅を・・・
 またのご利用お待ちしております。」


わざわざ礼儀正しく挨拶までして。
相手は“客”なので当たり前と言えば当たり前なのだが。
はっきり言うと海賊にここまで礼儀正しいのは彼女ぐらいなものだ。
いくら客と言えど所詮は海賊。そんなものなのだ。

 


「あ゛ー・・・疲れた・・・」

「随分働いたからのう・・・」

「うおお!疲れた!!」

『クルッポー!疲れたなら黙ってろ!!』

「今日は解散だな。」


夕刻。
かなり大掛かりな修理を済ませ、
職長5人が1番ドックに帰ってきた。
パウリーが伸びながら呟く。
カクも苦笑しながら相槌を打つ。
タイルストンが大声で叫び、
ためらい無くルッチが殴る。
そしてルルが全体をしめようとした時、


「・・・お?」

「・・・・・・ ?」


パウリーとカクが同時に気付く。
木材付近で が座り込んで寝ていたのだ。


「・・・こいつこんな所で寝てやがる・・・」

「疲れたんじゃろう・・・ワシら5人も居なかった事じゃし。」

『ポッポー ・・・こんな所で寝てると風邪ひくッポー』

「うおお!起きろ ・・・」

「黙ってろタイルストン!」


パウリーが の顔を覗き込んで話すと他の職長達が続く。
危うく本気で叫びかけたタイルストンをギリギリでルルが殴る。
今の声で が眼を覚ますかと思ったが寝息を立てたままぐっすり寝ている。
そうとう疲れていたのだろう。
職長達は安堵の息を漏らす。


「・・・で。どうするよ?」


パウリーが切り出す。


「こんな所で寝ておっては
 ルッチの言うとおり風邪をひいてしまうじゃろう。」


カクが答える。


『だが起こすのは可哀想だッポー
 ていうか起きそうにないッポー』


ルッチが答える。


「うおおお!!じゃあ・・・」

「黙ってろ!!」


タイルストンが話しかけたがルルが止める。殴って。


「・・・誰かが・・・」

「・・・ を・・・」

『・・・送るしかないッポー・・・』

「・・・・・・お前ら の家知ってるか?」


交代で話す3人。
にルルが重要な質問をする。


「「『・・・・・・・・・』」」

「・・・てことは・・・ を家に入れるか?」

「「『・・・・・・!!』」」


ルルの質問に沈黙する3人。
そして冷静に答えるルル。
ルルの答えに驚く3人。
そして冷静に考え込むルル。

しばらく沈黙が続く。
考えがまとまったのかルルが顔を上げる。


「・・・・・・フム。では俺が を連れて帰ろう。」

「・・・・・・なっ!」

「・・・・・・・・・」

『・・・・・・・・・』


ルルの言葉に驚くパウリー。
沈黙するカクとルッチ。


「まぁそれが一番良いじゃろうな。」

『ポッポー そうだな』

「だろう?」

「オイちょっと待て・・・」

「「『何だ?』」」

「・・・・・・いや・・・別に。」


納得して頷くカクとルッチ。
ルルも頷く。
何か物言いたげに右手を出したパウリーだが
3人に振り向かれて言葉を飲み込んだ。
似合わないその動作に少し疑問を感じたが
大体予想がついたので深く追求はしなかった。


「じゃあ・・・解散だな・・・」

「ああ。お疲れ。」

「・・・・・・・・・」

『クルッポー パウリー明日は遅刻するなッポー』

「!!しねェ・・・よ!」


ルルが疲れたという表情で言った。
カクも続いて言う。
パウリーは浮かない顔をしていたがルッチは冷静に注意。
ついつい叫んでしまいそうになったが の事を思い出し少し小声で怒る。
パウリーが人に気を使っている・・・
何て驚いたのも最初だけで。

パウリーが人に・・・というか に気を使いだしたのは
が来て2週間程経ってからだった。
喧嘩をしていても が止めるとすぐにやめたり
が来た途端に静かになるパウリーなど色々な目撃情報も多い。
単純なパウリーの事だから理由なんて考えなくてもわかる。
以外は。


「うおお!じゃあ・・・」

「黙れ!・・・じゃあまた明日。」

『クルッポー!』

「・・・じゃあな。」

「ああ。また明日。」


挨拶を交わし去っていく職長達。
はというと自分が原因で職長達が言い合っていた事も知らずに
ルルの背中で静かに寝息を立てている。

職長達は が掃除をしていたという事実を知ることは無かったが。

 

また明日からも1番ドックの1日が始まる。

 

 

――――――――――あとがき***―――――


また書いちゃいましたがれえら・・・! (は?
ていうかまた読みにくくなりましたね・・・;;すみません・・・;;
2つ分の作品を無理やり1つにまとめたような作品ばっかで・・・申し訳ない・・・;;;
でもモテモテ夢主と職長達等を書くのは楽しいです!とっても! (訊いてない
ていうかごめんなさいツボなんて知りません適当です。 (オイ
・・・船大工って行ってらっしゃいませとか言いますか? (・・・
それに職長達ってこんな挨拶すんのかな・・・
ごめんなさい間違いばっかですいません!精進します〜〜
そして今度こそ・・・今度こそ主人公の秘密を・・・!!

2006/4/14

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